文字リレー企画作品 掲載の項
2024年4月1日~8月17日に渡り行われた東方ニコ楽祭「文字リレー企画」において、投稿された作品の掲載ページです。
総勢14名にて紡がれた物語をご堪能下さい。
Aチーム
起:水炬
承:蓮々
転:藤原拉麵
結:SABA
起:水炬
玉藻なす浮かぶ水泡の一つには
不満だ。
つまらない訳じゃないけど、不満だ。
満たされていない訳じゃないけど、不満だ。
彼女は鬱屈した感情を抱いていた。
彼女はそれがよくわからなかった。
封印されてから幾年月が経っただろうか。わからない。
赤く満たされた潦に蹲りながら考える。
封印の力は弱まっただろうか。わからない。
紅く満たされた池に浸かりながら考える。
封印はもう解けないのか。わからない。
自傷した血の池の中で考える。
いつまでここにいればいいのだろうか。わからない。
彼女は審念熟慮を繰り返していた。
いつまで揺蕩っているのだろうか。わからない。
彼女は半醒半睡の中、深緋の水底へ沈んでいった。
「……ねぇ」
不意に呼びかける声が聞こえた。はて、誰だろうか。
身を起こし辺りを見回すと見知らぬ河原だ。
「よかった、生きてた」
傍らにいたのはやはり面識がない人物。はて、誰であろうか。
承:蓮々
紅の浅瀬に沈む生きすだま
やはり面識はない。
話しかけてきた、積み石に腰掛けている亜麻色の髪の人物は、幾ら過去を回顧しても覚えが無い。
そんな困惑した私を見るに見兼ねたのか、彼女は言葉を続けた。
「いきなりこんな場所に来て戸惑ってるの?でも大丈夫、ここのみんなも一緒よ。」
彼女はそう話しながら、一つ石を積んだ。
辺りを見渡すと、数多の子供の霊が浮遊しているのが見える。
私が、同じ?
「そうだ、貴女も一緒に石を積みましょう?」
また一つ、石が積まれた。
積まれた石の如く、私の中の何かが揺れ動いた。不安定であった。
「みんな楽しんでるの、貴女もきっと楽しめるわ。他の事なんて何もしなくていいんだから。」
また一つ、石が積まれた。
正体の分からぬそれに、私という存在を蕩揺させられたようだった。不安定であった。
途端、積まれた石が崩れ出した。
刹那、私は声を荒らげ、彼女に向かって叫んだ。
転:藤原拉麺
水鳥の 浮きて空見る 飛ぶ魂
「石を積み上げるだけで楽しめるのか?そもそもお前らは何のために石を積んでいるんだ。私が他の霊と同じだというのか?こんなところにいられるか!」
いきなりの出来事だったからなのか、彼女は少し困惑した。しかし、すぐに口を開いた。
「でもここは賽の河原。どんな罪を犯したかは知らないけど、貴女は罪を償う必要があるの。でも安心して、毎日石積みをするのは辛いかもしれないけどすぐに楽しくなる。ここにいるみんな幸せだよ。」
優しそうに彼女は話しながら、また石を積み始めた。
私は思わず叫んだ。
「石を積むことで償う?それが贖罪になるわけない。私は先に行く。」
そういいながら私はこの場から去った。
去っていく私を見ながら彼女は自分を止めようと声を発していたが、私の足が止まることはなかった。
彼女の積んでいたつみ石に亀裂が入った。
「ここから逃げたとしても賽の河原なのに…」
結:SABA
射干玉の夜に巡り合う赤月影
歩き続けた、行き先はない。ただ歩き続けた。
逃げたのか?否、私の居場所は此処ではない。私の足が止まることはなかった。
あの石を積む子らの逆縁の罪はいずれ許されよう、それが理だ。
六道を外れた自分にその時は来ない。
不思議だった。封印は解かれたのか?破られたのか、私の存在が忘れ去られたのか……
考えても詮無いことだ、思案は止め進み続けた。
気付くと竹林にいた。見上げると月、満月だった。
不気味なまでに妖しく赤く光り、私を照らしていた。
「この辺で暮らしてみるか」そう独り言ちた。
妖怪退治を生業とし、結果妖術を忌み嫌われ、人の身でありながら人から封印された。
同じ失敗はしない。
「さて、なにしようか?」月に語り掛けた。
不思議と笑みがこぼれた。
笑うことが出来た自分に少し驚き、少し照れくさくなった。
月は不気味なまでに妖しく赤く光り、私を照らしていた。
Bチーム
起:伊賀高原
承:緋畑代一
転:琴の付喪神
結:かづき
起:伊賀高原
「はぁ、またですか…」
古明地さとりは溜息をついた。
自身の妹、こいしを呼びに彼女の部屋を尋ねた所、そこはもぬけの殻だった。
周囲のペット達の心を見ても、案の定誰も所在を知らないようだ。
…つまりはいつも通りの「行方不明」である。
「また厄介な問題が起きそうね…」
さとりの能力…第三の目は極めて優秀でフェイバリットだが、妹を捉える事だけは不可能である。
11点をつけたくなるような自信に満ち溢れた顔も、こうなっては10点程減点されてしまう。
「…考えても仕方ないわ。一旦この事は路傍に置きましょう」
結局、さとりの対応もいつも通りであった。
やれ紅い館の引きこもりと遊んできただの、すごいお面を被ったすごいスカートの子と踊ってきただの…
こいしの行動を読む事はさとりの灰色の脳細胞でも不可能であった。
さとりは隈のついた目を廊下に向けて、足取り重く部屋に戻った。
承:緋畑代一
自室の扉を開けた、その時。
「ぼぉーーん!!」
一瞬、妹の声と姿を捉えた気がしたが、考える間もなく目の前が真っ白になった。次に目を開いた瞬間、身体が浮いて、いや、落ちている!真っ逆さまに!飛ぼうにも何故か力が入らない。ああ終わった!と思った矢先、どぼん、と今度は水の中。溺れる……!息ができない……!!
だが、もがくうち、地に足は着くことに気づいた。呼吸を取り戻したが、混乱する頭に次々と別の感覚が襲いくる。眼前がチラチラと輝いている。おまけに熱い……火の海だ!おまけに、ずぶ濡れに浸かった水もよく見ると血の池だ!一体なに!?ここは核融合炉の中!?
そして視界の隅に蠢く一つの影を捉えた。お空?いや違う。もっともっと邪悪な心情が剥き出しで直視できない……!!
そこには、「熱烈歓迎灼熱地獄」と書かれた、緑のヨレヨレのTシャツを着た奇妙な細身の怪物が居たのだ。
まさに悪夢。それ以外何がある?
転:琴の付喪神
「そこにいるのは誰?」
さとりが問いかけると、変な文字が羅列されているラフなTシャツを着た妖怪が喋り始めた。
「私はテンカジン、旧血の池地獄に住みついている伝説級の血を吸う妖怪だ。覚えておけ!さっき私を積み荷の嵩増しにしようとしたお燐への意趣返しだ!いつものように口を封じる!末代まで恨め!」
テンカジンと名乗る妖怪は話終えるや否や、人の顔よりも大きな鬼火をさとりに向けて大量に放ってきた。
しかし、さとりには相手の考えはお見通しなので避けるのは楽……なはずなのだが……
「あれ?何も聞こえない?」
さとりは目の前の妖怪の考えを読み取れないことに気づいた。周りを見渡したが、能力を封じているような怪しい形跡は何も無い。
「私が心を読めないのはこいしだけのはずなのに……そしてなぜお燐のことまで……まさか!」
その瞬間目の前に現れたのは、もぬけの殻となっていた部屋の主だった。
結:かづき
「んで、妹さんのこと何とかして欲しいんすけど」
何故かこいしの服を着て、無気力に引き摺られていた妖怪が助けを乞う。
「なるほど、お燐に轢かれて倒れていたら、運悪くこいしに拾われたと」
「わあ、話が早い」
思考(はなし)が通じたお陰で、ともかく経緯は理解した。
さて、此度の我儘はどう始末を……。
「話は聞かせて貰いました!」
「つまり、可愛いペット対決ですね!?」
などと考える暇もなく、恐らく何も聞いていない一匹と一羽が乱入する。いや、轢き逃げの話を聞かせて貰いたいのは私の方だが。
「ふっ、受けて立つわ!行くわよ、お天!」
そんなペット達に呼応し、こいしが咆える。
確信した。これはもう、収拾が付かない。
「お、そういう話なら、ちやほやされるのは嫌いじゃ……え、お天?誰?」
巻き込まれた貴女も、御愁傷様。
そうして勝手に幕を開けた、文字通り血で血を洗うペット対決。
嗚呼……今日も、頭が痛い。
Cチーム
起:天雨ネクスト
承:和風海苔
転:仙石チシ
結:mixtuti桜餅
起:天雨ネクスト
タイトル;レミリア妖魔本を作る
レミ「私の名前はレミリア」
レミ「小鈴の手紙のお礼に妖魔本を作ろうとしている紅魔館の当主よ」
咲夜「ところでお嬢様、妖魔本の作り方はご存じで?」
レミ「知らない、だから」
レミ「サクエもんサクエもん、妖魔本の作り方を教えて」
咲夜「しょ~うがないな~レミ太君は」
(国民的アニメの秘密道具を出すときの音.SABA)
咲夜「パチュリー・ノーレッジ」
咲夜「というわけでこのパチュリー・ノーレッジが妖魔本の作り方を教えてくれるよ」
レミ「わ~ありがとうサクエもん」
レミ「早速パチュリー・ノーレッジを使って(?)妖魔本を作ってみるよ」
咲夜「頑張ってねレミ太君」
承:和風海苔
ハロー!ムキュムキュうー☆チューブ
パチ「ということで、妖魔本作成でお困りの皆さんに今日は取っておきの道具をご紹介♪」
レミ「わぁ〜なんだろ、レミィ楽しみー」
パチ「今日ご紹介したいのはコチラ、妖魔本製造機!」
レミ「電子レンジじゃねーか!」
パチ「ところがどっこい、これをそんじょそこらの電子レンジと一緒にしちゃダメよ」
レミ「電子レンジなのは否定しないのね…」
パチ「妖魔本というのは主に妖怪が妖力を込めて認めた書物だけど」
パチ「このレンジを使えば、人間が書いた既存の書物にも妖力を込めて妖魔本に出来るのよ!!」
レミ「それヤバくね?」
パチ「使い方は簡単、レンジに本を入れて妖力を流し込みながら3分間チン」
レミ「あら簡単♪」
パチ「お買い求めはコチラから!」
☏508-8982-0849(語呂:こうまばくはつおやしき)
パーチェネット♪パチェネット♪夢のパチェネットれみりゃ〜♪
転:仙石チシ
レミ「それじゃあさっそくこの妖魔本製造機を使って妖魔本を作るわよ!でも何を入れれば」
?「妖魔本製造機ですか……何を入れます?わたしも同行します」
レミ「紅美鈴」
美鈴「早速ですが私のおすすめはこれです」(バァァァァン‼)
レミ「これはジ〇ジ〇の奇妙な冒険第三巻!?まさか――ッ‼」
美鈴「そう!そのまさかです‼」
(美鈴は躊躇せずソイツを機械にぶち込むッ!
けたたましい轟音が紅魔館を震わせ、現れたのは山吹色に輝く妖魔本‼)
レミ「これが妖魔本になったジ〇ジ〇三巻……凄まじい力を感じるわ……」ゴゴゴゴゴ
レミ「早速試してみましょう!咲夜‼」
完璧で瀟洒なメイドによって用意された身代わり君!それ目掛けて永遠に幼き紅い月は妖魔本の力を解き放つ――‼
レミ「ふるえるぞハート!燃えつきるほどヒート‼おおおおおっ刻むぞ血液のビート!」
レミ「山吹き色の波紋疾走(サンライトイエローオーバードライブ)‼」
結:mixtuti桜餅
「「というわけで妖魔本を作ろうとしたらうっかり紅魔館が爆発四散したので今回は中止になりました」」
パチ「ワォ☆レミ太君の次回作にご期待ください♪」
パチ「ちなみにこの妖魔本は責任をもって処分したよ!!」
レミ「まぁ、こんなこともあるわね。でも、これで終わりじゃないわ。次はもっとすごい妖魔本を作ってみせるわ!」
咲夜「ついでに、危険な妖魔本製造機をクーリングオフし、もっと安全な妖魔本製造機を作らせました」
レミ「ナイスよ、咲夜」
レミ「早速、新しい妖魔本製造機を試してみるわ!」
(数日後)
レミ「この新しい妖魔本製造機、安全だし、使い勝手も良いわね」
咲夜「お嬢様、、小鈴さんへ妖魔本を届けるのをお忘れなく」
レミ「あっ、そうだった!でももう一冊だけ…」
咲夜「お嬢様、そのセリフはもう五十回目です」
妖魔本作りにはまったレミリアは昼夜問わず作り続け、当初の目的など疾うの昔に忘れ果てていた。
Dチーム
起:Aneko3
承:仙石チシ
転:織然
結:伊賀高原
起:Aneko3
十六夜咲夜が紅魔館に帰ると、玄関口でパチュリー・ノーレッジが息も絶え絶えに座り込んでいた。
「何だって、今……読もうと、思った、本を……!」
今まさに霧雨魔理沙が本を盗んでいったと見て取れる。
「パチュリー様、取り返しに行きましょうか?」
パチュリーは息を整えてから首を振った。
「おかえり、咲夜。それはいいわ……それより調べてほしいことがあるのよ」
「何でしょうか?」
「今朝から妙な音が聞こえるの。とても微かな——そうね、歯車みたいな」
大きな欠伸をして目を擦る。最近は大きな実験のため、連日遅くまで取り組んでいる様子だった。
「少し眠るわ……よろしくね」
「承知いたしました」
早速館中を探索したが、それらしい音はあちこちで聞こえて特定できない。道すがらメイド妖精や門番の紅美鈴にも尋ねてみたが、情報は得られず、埒が明かない。
「これは専門家に相談した方が良いかしら」
承:仙石チシ
「綿密に練られた設計に、それを実現する職人の技……なかなかの仕事だねぇ」
紅魔館時計塔の内部を見渡した河城にとりは、その複雑な構造を一目で理解し感嘆の言葉を連ねた。パチュリーが聞いたという歯車の音はこの時計塔からのものではないかと考えた咲夜は、からくりに詳しい河童を頼ることにしたのだ。
「なあこれ解体」
「ダメ」
「だよね。なら解体しない方法で調べるよ。ただ……」
にとりは訝しげな目で咲夜を見る。
「何よ」
「いや、魔女様にだけ聞こえるんだろう?私よりも尋ねるべき相手がいるんじゃない?」
「……あなたはあなたの仕事をして」
鋭い目で睨まれたにとりは、恐る恐るといった様子で仕事に戻る。
十六夜咲夜は完全で瀟洒なメイドだ。当然(失礼ながらも)パチュリー本人の幻聴である線も考えていたし、それらに詳しい人物にも使者を送っている。到着を待つ間に他の仕事も済ませてしまおう、メイドは忙しいのだから。
転:織然
「ただの寝不足じゃないの?」
にべなく言い放つ薬売りに、咲夜は安堵とも落胆とも取れる息を漏らすのみであった。
「私からすれば、魔法使いと言っても所詮は人間の域を出ないもの。あんな脆弱な身体で夜更かしを続けてたら幻聴が生じても不思議じゃないわ」
鈴仙・優曇華院・イナバ。
竹林の薬師へと繋がる存在であり、パチュリー自身の異常を危惧しその知識を借りようと招いたものだ。
「そうね、それで済むなら世話がないわ」
「…どうしても心配なら直接お師匠様に診てもらって。まぁ、あの出不精さんが館を出る気になったならの話だけど」
結局得られたのは月並な答えであったが、状況だけ見ればそれも当然と言えた。
だが探究欲の権化たるあの大司書がその答えに果たして納得するものか。
その後が続けば付き合わされるのは十六夜咲夜に他ならない。
この時点で咲夜の思案は既に舵を切っていた。
そう、求められるのはあくまでも解決なのだ。
結:伊賀高原
「咲夜!時計塔を少しバラしたら…」
「バ ラ し た の ?」
「い、いやぁつい…でもこんなのが出てきたんだよ!」
にとりの手にはカチカチと鳴る物体があった。
…お察しの通りの「アレ」であった。
「いや、早く止めなさいよ!あと1分じゃない!」
「あぁ、ゴメンゴメン」
にとりはその物体を水で湿らせ、使い物にならなくした。
「これで良し。しかし誰が一体…」
「なぁんだ。つまんないの」
「!妹様…」
そこには、いつもは地下にいる引きこもりの姿があった。
「プリンの恨みを思い知らせたかったんだけど、まぁいいわ。
今から私が爆発させちゃえば問題ないわね!」
「にとり!みんなを呼んできて!総力戦よ!」
「間に合うと思ってる?咲夜」
「紅魔館は私が守るわ!爆発オチなんて絶対にさせない!」
咲夜はナイフを握りしめてフランへ突進した。
十六夜咲夜の戦いはこれからだ!